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飛蚊症(ひぶんしょう)

更新日: 2019年03月21日

白い壁を見たときや空を見たときなどに、黒い点や糸くずや虫のようなものが視野の中に見えたことはないでしょうか。このような症状を飛蚊症といいます。目を動かしても影は同じ方向に動き、細かく揺れるので、目の前を蚊が飛んでいるように感じます。影の形は、ひも状やリング状のものなどさまざまで、数、色合いなどは人によって異なります。若年者から老人まであらゆる年齢層で起こります。

原因

飛蚊症の原因は、特に治療が必要でない「生理的」なものと、治療をしないと視力が傷害されることがある「病的」なものに分けられます。

生理的飛蚊症

眼球内には硝子体と呼ばれる、透明なゼリー状のものがつまっています。この硝子体は、99%以上が水分で、わずかに線維を含んでいます。この線維が加齢とともに濁り縮んで、次第に網膜面から離れ、線維の塊が眼球内をふわふわと浮いた後部硝子体剥離(下図)と呼ばれる状態になります。つまり、後部硝子体剥離は硝子体の老化現象といえます。この線維の塊は、ものを見ている本人には影として認識され、あたかも蚊が目の前を飛んでいるかのように見えるのです。これが飛蚊症の本態です。後部硝子体剥離自体は病気ではありませんが、網膜裂孔や網膜剥離という病気を引き起こすことがあるので注意が必要です。飛蚊症自体は完全に消えることはありません。しかし慣れてくると、普段はその存在に気付かなくなります。また、後部硝子体剥離が起こる時に、網膜と硝子体のくっつきが強い部分の網膜を引っ張り、この刺激が脳に伝わると、「ピカピカ光っているものが見える」「稲妻が走っている」などの、光視症(こうししょう) と呼ばれる症状が現れることもあります。

病的飛蚊症

網膜裂孔・網膜剥離

網膜に穴が開いていたり(網膜裂孔)、網膜が剥がれてしまった状態(網膜剥離)では、しばしば飛蚊症を自覚します。光視症(視界の中に閃光のようなものが見える症状)を自覚することもありますが、無症状のこともあります。病状が進んでくると視野欠損(カーテンをかぶせられたように見えにくくなる症状)や視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので痛みはありませんが、適切な治療を行わないと、失明する危険性が高い病気といえます。

硝子体出血

糖尿病や高血圧、外傷などが原因で硝子体の中に出血することがあります。ひどい出血の場合は、目の前に墨が垂れてきたような見え方や、霧がかかったような見え方をしますが、出血が軽度の場合は飛蚊症として自覚されることがあります。最初は軽症であっても、日に日に影が濃くなるようであれば、出血が続いていると考えられます。

ぶどう膜炎

一部のぶどう膜炎では硝子体に濁りを生じるため、飛蚊症を引き起こします。

まとめ

飛蚊症の原因が生理的なものか、病気の前触れなのかをチェックすることが重要です。ほとんどの場合は、加齢などの生理的変化によるもので、特に治療法はありません。徐々に気にならなくなりますが、浮遊物は消失しません。時間とともに慣れてきますので、過度に心配する必要はありませんが、まれに網膜剥離など重篤な疾患の前触れであることがあるので注意が必要です。
飛蚊症を自覚したら、一度眼科を受診し眼底検査を受けましょう。

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